top of page

サン・シーロの夜――情熱が交錯するミラノのサッカー

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月3日
  • 読了時間: 4分

 イタリア北部の大都市ミラノには、世界的なファッションやビジネスの最先端が集まる。しかし、この街に生きる人々が“心底燃える”瞬間の一つは、何といってもサッカーの試合だ。赤と黒の「ACミラン」、青と黒の「インテル・ミラノ」が本拠地を同じくするこの街では、ときに「ミラノ・ダービー」が行われ、激しい情熱が渦を巻く。

1. スタジアムへの道

 試合当日、街のあちこちでユニフォームやマフラーを身につけたサポーターが、地下鉄やバスに乗り込み、一斉にサン・シーロ(Stadio Giuseppe Meazza)へ向かう。赤と黒の旗を掲げるグループ、青と黒のスカーフを身につけて歌を口ずさむ人々――彼らは朝からすでにテンションが最高潮だ。

 スタジアムが近づくにつれ、路上には出店が並び、ホットドッグやパニーニの香りが漂う。ある男性は、通りがかった少年とハイタッチを交わし、「今日は勝たないとな!」と大声で叫ぶ。サッカー当日のミラノは、まるで祝祭のような活気に包まれる。

2. サン・シーロの風景

 スタジアムの外壁はコンクリートの柱が並び、巨大で近未来的な雰囲気を醸し出している。ゲートをくぐると、一気に視界が開け、内側には緑のピッチが広がる。スタンドにはすでにサポーターがぎっしり詰めかけ、チームカラーの旗が波打つ様子は圧巻だ。

 アントニオという名の青年は、幼い頃からACミランのサポーターだ。兄はインテル・ミラノを応援しており、家ではしょっちゅう「どっちが強いか」で言い争いをしていた。今日は運悪く(?)ミラノ・ダービーの日。アントニオは赤と黒のユニフォームを着込み、対角線上の青黒エリアを見渡して苦笑する。

3. 試合前のゴール裏

 ゴール裏の応援席は試合前から大盛り上がりだ。チャント(応援歌)を繰り返し、旗やバナーを振りかざし、一体感を高めていく。選手入場の際には、スタンド全体を使ったコレオグラフィー(大規模な応援演出)が披露され、赤黒と青黒のビジュアルがスタジアムを二分する。

 アントニオも仲間たちと肩を組み、拳を振り上げて歌を響かせる。 「Forza Milan!(フォルツァ・ミラン)!」 声援が耳を突き抜け、ピッチ上の選手たちに届く。彼らの足元には人工芝ではなく伝統的な天然芝が敷かれ、軽快にドリブルを試みる選手たちのスパイク音がスタジアムの静寂を破る合図でもある。

4. 前半のドラマ

 キックオフのホイッスルが鳴ると、スタジアムは一瞬にして戦場と化す。両チームともに攻守の切り替えが速く、中盤では激しいボールの奪い合いが繰り広げられる。ミラノ・ダービーは世界中の目が集まる一戦ゆえ、選手たちの緊張感も高い。

 前半30分、青黒のカウンター攻撃が決まり、スタジアムの半分が狂喜の渦に包まれる。アントニオは唇を噛みながら、仲間たちと落胆の声を上げる。するとすぐに赤黒サイドが猛攻を仕掛け、ポストをかすめるシュートでゴールに迫る。ゴールこそ奪えないが、観客のボルテージは高まるばかりだ。

5. ハーフタイムの休息

 ハーフタイムになると、サポーターは売店に走り、パニーニや飲み物を買いながら、今のプレーを激論する。アントニオは「後半は絶対逆転できる!」と仲間に檄(げき)を飛ばし、再びスタンドへ戻った。

 コンクリートの階段を踏みしめながら、スタジアムの上層から下層まで見渡せる一瞬があり、そのスケールに改めて圧倒される。イタリア国内リーグの試合とはいえ、ここはヨーロッパ屈指の“大舞台”だと実感する。

6. 後半の盛り上がり

 後半開始早々、赤黒のスーパースターがドリブル突破を見せると、アントニオたちの周囲は一気に総立ち。華麗なフェイントでゴール前に持ち込み、放たれたシュートはゴールネットを揺らす。 「ゴーーール!」 サン・シーロの半分が爆発し、アントニオは仲間たちと抱き合い、喜びの涙をこぼしそうになる。1-1の同点となり、試合はますます白熱する。選手たちも勢いづき、スライディングタックルや豪快なミドルシュートが飛び出し、見る者を飽きさせない。

7. 試合終了とその後

 後半アディショナルタイム、最後の決定機を赤黒は活かせず、試合は1-1で終了。試合内容の濃さに、サポーターからは怒号と賞賛が入り混じった拍手が起こる。勝ちたかった気持ちは強いが、それ以上に「よい試合を見られた」満足感もある。

 アントニオは悔しそうに小さく肩をすくめながらも、友人と肩を組んでスタジアムを後にする。出口では青黒のサポーターにすれ違うが、罵声や挑発を抑えて互いに「またな!」と笑う者もいる。ミラノの街は、ときに激しく対立しながらも、サッカーという文化を共有する仲間でもあるのだ。

エピローグ

 夜風に吹かれ、アントニオは地下鉄の駅へ急ぐ。駅周辺のバール(バー)では試合の分析が始まり、ビールやワインを片手に盛り上がる人々が通りに溢れている。 ミラノのサッカーの夜は、勝敗を超えた情熱で彩られる。 サン・シーロで起こった出来事は、街全体に波及し、人々の言葉や心を踊らせる。 「次は絶対勝つぞ!」と叫ぶ声が遠くから聞こえ、アントニオの胸にも熱い想いが残る。ミラノのサッカーは、永遠に終わらないドラマとして、また明日へ、また来週へと続いていくのだ。

(了)

 
 
 

最新記事

すべて表示
表彰される

「静岡駅前・エレガンスストア物語:三浦さんと杉山さん、表彰される!? 〜“化け始めた二人”の大騒動〜」 ――穏やかな雰囲気だったエレガンスストアに、ある日突然“表彰”の知らせが舞い込み、三浦さんと杉山さんが大騒ぎ! 普段は天然&情熱の二人が“化け始める”とはいったいどういう...

 
 
 

Comentarios


bottom of page