第一幕:突然の値引き要求
場面:中小企業・道下(みちした)工業の事務所
道下和久(みちした・かずひさ)社長は、声をひそめながら会議テーブルに落ち込んでいる。机の上には、発注元から送られた文書が散乱している。
道下:「ちょ、ちょっと聞いてよ、皆さん……。向こうが“値引きしろ”なんて言ってきた。理由が『他社が値下げしたから』だって……。こんなのおかしいでしょ!?」
稲垣(いながき)(経理担当):「ね、値下げしたのはウチじゃないのに。なんで道下工業が値引きしなきゃいけないんですか……」
そんなところへ、大林(おおばやし)(営業担当)が電話を握りしめて飛び込んでくる。
大林:「社長! 発注元の担当が“1週間以内に回答くれないと、契約切るぞ”だなんて……!」
道下:「うわああ! もう限界だ……。誰か助けてくれ!」
皆が頭を抱えるなか、一人がヒントを思い出す。
稲垣:「あ、そうだ……確か“山之内行政書士事務所”が、こういう下請法絡みを得意だって噂……」
道下:「行くしかない! その“やまのうち”だか“やまのうえ”だかの先生を頼るんだ!」
バタバタと出発する姿は、まさに火のついたように慌ただしい。
第二幕:山之内行政書士事務所の珍対応
場面:山之内行政書士事務所 入口
ここは、看板に「山之内行政書士事務所」と大きく書かれたごく普通のオフィスビル。道下たちが扉を開けると、なぜか “パーティーグッズが山積み”の受付が目に入る。
受付担当・広瀬(ひろせ)(にこやかに):「いらっしゃいませ! えっと……お祭りの打ち合わせですか? それとも婚姻届のご相談ですか?」
道下:「え、いえ、値下げを……違う、値引きの話というか……なんか下請法とか……」
広瀬:「ああ! 値下げの件ね! はいはい、担当の山之内先生に伝えますね!」
広瀬がスマホで内線をかけようとするが、なぜかパスコードを忘れたようで「えっと、1234だっけ、いや4567か……」と大混乱。道下は頭を抱える。「大丈夫かな、ここ……」
第三幕:登場、山之内弥生(やまのうち・やよい)
ようやく現れたのは所長の山之内弥生(40代独身)。どこか陽気な雰囲気で、アロハシャツ姿……とまではいかないが、妙にカラフルなワンピースを纏っている。
山之内:「いやー、ごめんなさいね。ちょっと自治会のお祭り準備でバタバタしてて。で、値下げ要求のご相談?」
道下:「は、はい。ウチ以外も値下げしろと言われてるみたいなんですが……理由は『他社が値下げしたから』とかで……」
山之内(目を丸くして):「ぶっ、なんですかそれ。小学生の言い分か! 他が安いからあなたも安くしなさい、と。それはもう下請法違反の匂いがプンプンね!」
山之内が笑いながら資料をパラパラとめくり、「これ、絶対おかしいですよ。放っておいたらきっとエスカレートしますよ?」と、ひとり納得顔。道下たちが「じゃ、じゃあどうすれば?」と聞くと、山之内はニヤリと笑い、**「文書に書かせましょうよ、相手に“なぜ値引きが必要か”って具体的に! 絶対に矛盾が出ますから」**とアイデアを出す。
第四幕:理不尽な理由書が到着
場面:道下工業 会議室
山之内が提案した通り、「値引き理由を文書で正式に提示してほしい」と発注元に要求すると、まさかの文書が送られてきた。そこには驚くべき内容が……
「A社が10%値下げしたから」
「当社の営業方針として、取引先にも同様対応を求める」
「下請法云々とごねるなら取引打ち切りかも」 などなど
道下:「えええーーっ! 本当にこんな文章送ってきたの!? こんなの理不尽すぎて!」従業員たちも大騒ぎ。「他社と同じだけの値下げを強要って、理由になってないでしょ……」そこへ山之内が登場し、「どれどれ」と文書を読み、「ぷぷっ」と吹き出す。「なんとまあ、あまりに無茶苦茶すぎて逆に助かりますね……」
第五幕:下請法違反を指摘
山之内は件の文書をちらつかせながら、「これなら公取委や弁護士に見せれば一発ですよ」と自信たっぷり。「下請法では、発注元が一方的に下請代金を引き下げるのは違反。『理由』が“他社が値下げしたから”なんて、お笑いレベルだし……」道下は「でも向こうは強気で、取引を切るぞって脅されて…」と不安を漏らすが、山之内は「大丈夫! 脅してくるなら逆に好都合。こっちが“下請法上の問題点”を突きつければ、あっちのほうが焦りますから」と言い放つ。こうして「理不尽な値引き要求は法的に無効」とする文書を山之内と道下工業が連名で作成し、あえて強い口調で返送。ややコメディタッチの文章で失笑を買うが、実際に効果が大きいはず。
第六幕:発注元とのドタバタ交渉
ある日、発注元の**三浦(みうら)**担当者が、道下工業に直接乗り込んでくる。
三浦:「値引きは当社の方針。あなた方だけ特別扱いできません!」
山之内(横から口を挟む):「でも、下請法によると“優越的地位による不当な値引き”は違法行為ですよ?」
三浦:「うっ……そ、それは…“これまでも暗黙の了解”がありましたよね!」
道下:「暗黙じゃ困るんですよ。書面にはないし、ウチは認めてない……」
三浦は焦り始め、**「と、とにかく合意したことになってるんです!」と叫ぶが、山之内が「その証拠を示してください」と冷静に返し、「先日の理由書だって矛盾だらけですよ?」**と畳み掛ける。
三浦は完全に言葉に詰まり、最終的に「上司と相談します……」と肩を落として去っていく。
第七幕:発注元の“誤魔化し”発覚
さらに調べを進めると、発注元は他の下請企業にも同じような文書を送りまくっている事実が判明。「値引きの理由」がまるでテンプレートのように、**「他社が~」「コスト削減方針」**ばかり。山之内は「これ、まとめて公取委に通報すれば向こうが動かざるを得なくなるわね……」とニヤリ。その噂を聞きつけたのか、発注元の上層部が突然「誤解があった」とか言い出し、道下工業へ正式に“値引き要求は撤回”する書面を送ってきた。道下は唖然として、「こんな簡単に? 何だよ……」と拍子抜けしながらもホッと胸をなでおろす。
最終幕:笑顔で見送る未来
最終的に、道下工業は従来の価格で取引を継続できることに。一緒に戦った山之内は事務所で、道下が何度も頭を下げる姿を暖かく見守る。
道下:「本当にありがとうございました……。先生のおかげでウチは倒産を免れました……」
山之内(照れ笑い):「いいえ、私なんて書類をちょっといじっただけですよ。そもそも、気合で戦ったのは道下さんたちじゃないですか。」
道下:「でも、あの“他社が値下げしたから”の理由書を逆に突っ込んでくれたときは、正直、腹がよじれるほど笑えましたよ……」
山之内:「そりゃそうですよ、そんな理由が通ると思ってるなんて、発注元もお茶目だこと、ねぇ?」
二人が笑い合うその横で、補助者の広瀬と皮肉屋の若手スタッフは「次はどんな面白案件がくるかな?」と軽口叩いている。外に出ると、天気は快晴。道下工業の社員たちが笑顔で出迎え、「先生、またなんかあったら頼みますね」と手を振る。――こうして、「値引きの条件」というおかしな理由にまつわる騒動は幕を下ろし、地元の中小企業には再び穏やかな日常が戻ってくる。勘違いとドタバタの中に生まれた小さな勝利が、町に陽気な風を運んでいる。
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