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Azureセキュリティ要件定義

Azure 環境構築において NIST(米国国立標準技術研究所)のセキュリティガイドラインを参照しながら、要件定義段階で企業がどのようにセキュリティ要件を洗い出し、具体的に設計へ落とし込むかについて概要を記述します。

NIST Cybersecurity Framework - set of standards, guidelines, and practices designed to hel

1. なぜ NIST を参照するのか

1-1. グローバル標準としての NIST

  • NIST SP 800-53 や NIST Cybersecurity Framework (CSF) は、米国連邦政府機関のみならず多くの民間企業・海外組織でも参照される事実上の国際標準です。

  • 特に NIST CSF は、「Identify, Protect, Detect, Respond, Recover」という 5 つの機能を軸にセキュリティを体系化しており、クラウド(Azure 等)を含む様々な環境に汎用的に適用できます。

1-2. Azure と NIST の親和性

  • Microsoft Azure はグローバルクラウドとして、FedRAMP(NIST SP 800-53 ベース) をはじめとする多数の認証を取得しており、NIST コントロールとの親和性が高いことが特長です。

  • Azure の各サービス(EntraID、Key Vault、Defender for Cloud など)は、NIST のコントロール項目を満たすための機能を包括的に備えているため、企業が NIST に基づくセキュリティ要件を設定しやすいという利点があります。

2. NIST に基づくセキュリティ要件の洗い出し(要件定義フェーズ)

2-1. 例:NIST CSF 5 ファンクションごとの要件

  1. Identify (特定)

    • 資産管理(ID.AM): Azure リソース(VM、Storage、App Service 等)のインベントリを整備し、管理対象を明確化。

    • リスクアセスメント(ID.RA): どのリソースが機密データを扱うか、リスクレベルを算定。

  2. Protect (防御)

    • データセキュリティ(PR.DS): Azure Disk Encryption、Key Vault による鍵管理、RBAC で最小権限を実装。

    • アクセス制御(PR.AC): EntraID の MFA、条件付きアクセスを徹底。

  3. Detect (検知)

    • 異常検知(DE.CM): Azure Sentinel で SIEM を構築し、不審なログインや大量データ転送をアラート化。

    • 継続的監視(DE.AE): Defender for Cloud(旧 Security Center)でセキュリティスコアをモニタリングし、脆弱性を可視化。

  4. Respond (対応)

    • インシデント対応計画(RS.PL): データ漏洩やランサムウェア発生時に備えたインシデントレスポンス手順を整備。

    • 通信(RS.CO): 法務・広報への連絡、GDPR 等での 72 時間ルールを踏まえた通報体制。

  5. Recover (復旧)

    • 復旧計画(RC.RP): Azure Backup、Azure Site Recovery 等を活用し、DR(Disaster Recovery)構成を要件化。

    • 改善(RC.IM): インシデント後のレビューで教訓を次のフェーズに反映(継続的PDCA)。

2-2. 例:NIST SP 800-53 のコントロールカテゴリ

  • AC(Access Control): Azure Role-Based Access Control (RBAC)、Privileged Identity Management (PIM)、条件付きアクセス

  • AU(Audit and Accountability): Audit Logs、Activity Logs の収集・保管、Azure Sentinel でのログ解析

  • SC(System and Communications Protection): TLS 1.2/1.3、VPN 接続、Key Vault HSM など通信と保管時の暗号化

  • IR(Incident Response): Logic Apps を使ったインシデント自動対応、報告フロー、シミュレーションテスト

3. 実例:Azure 環境構築時に企業が定める主なセキュリティ要件

3-1. アクセス制御要件(AC)

  • MFA 必須: 全ユーザー、特に管理者アカウントは常時 MFA を強制する。

  • 最小権限の原則: EntraIDRBAC によるロールの細分化(Reader, Contributor, Owner など)を明確化し、不要権限を排除。

  • 特権アカウント管理: EntraID PIM で Owner / Global Admin 権限を一時付与(JIT)とし、監査ログを残す。

3-2. 暗号化要件(SC)

  • Storage/DB 暗号化:

    1. Azure Disk Encryption(OS/データディスク)

    2. Azure SQL の TDE(Transparent Data Encryption)

    3. Azure Storage (Blob, Files) でサーバーサイド暗号化

  • 鍵管理:

    • Azure Key Vault + Managed HSM を使い、RSA 2048 or 3072/4096 など要件定義

    • BYOK(Bring Your Own Key)で独自生成キーを持ち込み、NIST FIPS 140-2 準拠の HSM で管理するケースも

3-3. ログ・監査要件(AU)

  • 収集範囲: Activity Logs、NSG Flow Logs、Key Vault Audit Logs、VM Syslog 等

  • 保存期間: 90 日(ホット)+ 1 年または 5 年(コールド/アーカイブ)など法令・監査要件に合わせ設定

  • ツール: Azure Sentinel で脅威検知(KQL ルール作成)、SIEM 連携

3-4. DR・バックアップ要件(CP, RA)

  • RPO/RTO: 例:RPO 15 分 / RTO 1 時間で可用性要件を定義

  • Azure Backup ポリシー: VM 単位で日次バックアップ、保持期間 30 日/1 年など

  • Azure Site Recovery: 主要リソースを別リージョンへレプリケーション、フェイルオーバー訓練を半年ごとに実施

4. 導入プロセスと各フェーズでの検討ポイント

  1. 要件定義フェーズ

    • NIST CSF / SP 800-53 のコントロールカタログを参照し、どこまで実装するか優先度付けを行う。

    • 例:ISO 27001 や GDPR など他の規制との整合を確認する。

  2. 設計フェーズ

    • Azure サブスクリプションの階層(Management Group、Resource Group)や RBAC ポリシー、ネットワーク構成(VNet, NSG, Firewall)を具体化。

    • Key Vault、Sentinel、Defender for Cloud などの運用設計も進める。

  3. 実装・テストフェーズ

    • IaC (Infrastructure as Code) で ARM/Bicep/Terraform を活用し、再現性のある構築を実施。

    • セキュリティテスト(ペネトレーションテスト、脆弱性スキャン)を行い、不備があれば修正。

  4. 運用フェーズ

    • Monitor/Alert 設定を適切に調整し、誤検知率と見逃しを最小化。

    • インシデント対応訓練を実施し、NIST CSF “Respond” の成熟度を上げる。

5. 弊所へのご依頼のメリット

5-1. 要件定義から設計・運用まで一貫支援

  • 弊所では、NIST CSF / SP 800-53 のコントロールをベースに、Azure 環境のセキュリティ要件を洗い出しから実装まで一気通貫でサポート可能です。

  • 組織の既存ルールや国内外の規制(GDPR、APPI、HIPAA 等)とも突合し、過不足ないセキュリティ要件を策定します。

5-2. 実運用に即したアドバイス

  • ペネトレーションテストや設定レビューなど技術的な面に加え、法務・コンプライアンス面(DPA・SLA、データ越境移転リスクなど)も含めたコンサルティングが可能です。

  • Microsoft Azure の各種ベストプラクティス(Well-Architected Framework、Security Benchmark)に精通した専門家が対応します。

5-3. 継続的なアップデートと監査対応

  • NIST はバージョンアップが行われることがあり、Azure 側も新機能やポリシーが追加されます。弊所では、これら最新動向に合わせた継続的改善を支援し、監査法人・認証機関への対応もサポートします。

  • 必要に応じて内部統制の強化(SOX法/FISCガイドライン 等)やプライバシー保護(個人情報保護法/GDPR)にも対応できるよう調整します。

6. まとめとお問い合わせのご案内

NIST に基づくセキュリティ要件を設定することは、グローバルで通用するセキュアな Azure 環境を構築するうえで大変有効です。具体的には、

  • NIST CSF を軸に、Identify/Protect/Detect/Respond/Recover というセキュリティライフサイクルを明確にする

  • NIST SP 800-53 のコントロールを参照し、アクセス制御、暗号化、監査ログ、DR/BCP など多岐にわたる観点を網羅

  • Azure の特性(RBAC、Key Vault、Sentinel、Defender for Cloud、Backup/ASR 等)を組み合わせ、技術面での実装を滞りなく進める

  • GDPR や国内法規制への準拠、監査法人・顧客からのセキュリティ要求にも柔軟に対応できる

といったメリットが得られます。

弊所では、NIST に準拠したセキュリティ要件定義や、Azure 環境の設計・運用構築支援を一気通貫で行っております。

  • 「NIST に準拠したセキュリティを整備したいが、どこから手を付ければいいかわからない」

  • 「すでに Azure を利用しているが、監査や法令に対応できるか不安」

  • 「最新のクラウドサービスを活用したいが、セキュリティやガバナンスとの両立が難しい」

といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。専門家がチームとなり、御社のニーズに合わせた最適解をご提案いたします。

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銀行、製造業、損保など様々な業種で実績豊富な弊所にご相談いただくことで円滑に導入が進められます。

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